【2022年版】ガソリンスタンドチェーンの店舗数ランキング

2022年6月20日 | 業界・地域分析

ガソリンスタンド(SS)

世界中で「脱炭素」の動きが加速する中、他の自動車関連とともに大転換期を迎えているガソリンスタンド(SS※)業界。そんなガソリンスタンドの店舗数は、どのような動きをみせているのでしょうか。
今回は、当社のチェーン店データを元に、ガソリンスタンドチェーンの2021年4月~2022年4月の店舗数推移やチェーン別ランキング、前年同月比増減状況などを集計し、1年間の動きを詳細に追っていきます。また、2018~2022年の店舗数年推移をチェーン別に比較することにより、ここ4年間のガソリンスタンド業界の動向を探ってみます。


※サービスステーションの略。ガソリンスタンド(給油所)がおこなう洗車・修理等の付加サービスが業務として通常化するのにしたがい「サービスステーション(SS)」の呼称が一般化してきましたが、当記事では「ガソリンスタンド」の呼称で統一しています。


データの集計方法について


  • 集計元のチェーン店データは、チェーン店の公開情報を当社が調査・収集したものです。すべてのチェーン店を網羅したものではありません。また、実態とは異なる場合がありますのでご了承ください。
  • 2022年4月時点で、国内に10店舗以上展開しているチェーン店を集計の対象にしています。
  • 当社のチェーン店データ調査・収集は毎月を基本としていますが、隔月など定期収集のチェーンもあります。表・グラフの対象月に収集がなかったチェーンの場合、当月時点で最新のデータを記載しています。
  • 店舗数の増減率(%)は、2022年4月と2021年4月の対比で算出しています(小数点2位以下は四捨五入)。

【月別推移】ガソリンスタンドチェーン店舗数
(全体、2021年4月~2022年4月)

↓1.7% 大型再編が全体の店舗数増減に大きく影響した1年


ガソリンスタンドチェーン全体の店舗数推移(2021年4月~2022年4月)をみると、6月から10月にかけて前月を上回る増加傾向を続けた後、11月からは一転前月を下回る減少傾向となり、2022年4月まで減り続けています。その結果、2022年4月と前年4月を比較した前年同月比では、1.7%の減少となりました。
最も増加したのは6→7月(100店増)ですが、これは「出光」がこの月131店増えていることによるものです。また、最も減少した月は11→12月の427店減で、これは「昭和シェル石油」が一気に630店減少したことが主な原因となっています。
出光興産と昭和シェル石油は2019年4月に経営統合しています。この業界再編の動きが、業界全体の店舗数に大きく影響を与える形となりました。


ガソリンスタンド店舗数 推移

店舗数の増減率(前年同月比)

業種 2021年4月 2022年4月 増減率(%)
ガソリンスタンドチェーン 24,728 24,315 -1.7%

【2022年版】ガソリンスタンドチェーン 店舗数ランキング

ランキング上位はほとんどが減少、下位は現状維持


チェーン別店舗数ランキングを4月の前年同月比でみると、1位の「ENEOS(1.7%減)」と3位「コスモ石油(1.2%減)」が微減し、4位の「JA-SS」も3.7%減少しています。10店舗以上を展開する16社のうち上位半分はほとんどが減少しており、下位半分のチェーンは1店増が2社とプラスマイナスゼロが6社とあまり動きがみられません。
そんな中目立つのは、2位「出光」26.9%増と、5位「昭和シェル石油」35.3%減の対照的な増減率です。店舗数(給油所数)では、この一年で「出光」が923店増加し、「昭和シェル石油」は1,008店の減少となりました。。
経営統合で昭和シェル石油を完全子会社化した出光興産は、2021年4月に新ブランド「アポロステーション」を立ち上げ、旧出光系の店舗と旧昭和シェル系の店舗を2023年までに順次新ブランドに切り替えていく方針を発表しています。しばらくは3つのブランドが併存する状態が続くため、このような結果となったようです。

チェーン別店舗数ランキング(10店舗以上を展開する 計16チェーン)

順位 チェーン名 2021年4月 2022年4月 増減率(%)
1位 ENEOS 12,630 12,420 -1.7
2位 出光 3,433 4,356 +26.9
3位 コスモ石油 2,704 2,671 -1.2
4位 JA-SS 1,943 1,872 -3.7
5位 昭和シェル石油 2,856 1,848 -35.3
6位 キグナス石油 444 442 -0.5
7位 太陽石油 317 308 -2.8
8位 ホクレンSS 260 255 -1.9
9位 ユニペト 35 35 0
10位 ユニーオイル 28 28 0
11位 セルフィックス 19 20 +5.3
12位 きのした 16 16 0
13位 Gasta 12 12 0
14位 オートバックスエクスプレス 11 11 0
15位 INPEX 10 11 +10.0
16位 UENO 10 10 0

【年推移】チェーン別 店舗数
(上位10チェーン、2018~2022年4月時点)

3~8位は毎年徐々に減少 時代の流れか


ENEOS ~4ブランド統一により店舗数シェア50%超に~

2019年4月は前年同月から1,905店と大きく増加し、翌2020年も808店の大幅増となっています。一方、2021年と2022年はそれぞれ102店、210店と減少しています。
2019年急増の要因は、「JXエネルギー」と「東燃ゼネラル石油」との経営統合(2017年4月)により、2019年度中を目標に「ENEOS・エッソ・モービル・ゼネラル」ブランドの「ENEOS」への統一が進められためです。さらに、2020年6月には「JXTGホールディングス→ENEOSホールディングス」「JXTGエネルギー→ENEOS」の商号変更がおこなわれ、経営体制も「ENEOS」ブランドのもとに統一されています。
ちなみに「ENEOS」は、これにより店舗数シェア(※)で2018年4月時点の38.7%から51.1%(2022年4月時点)へと過半数を占めるまでに大型化しています。


※日本ソフト販売調べ(10店舗以上を展開するチェーン全体に占める割合)


ENEOS 店舗数年推移

出光 ~新ブランドスタートで2022年4月の店舗数が急増~

2021年までは店舗数が下降傾向を示していましたが、2022年4月は前年同月比26.9%(923店増)と一気に増加しました。
上記の月別店舗数推移や店舗数ランキングの文中でもふれたとおり、出光興産と昭和シェル石油は2019年に経営統合し、2021年4月から新ブランド「アポロステーション」の展開を始めました。このため、この1年間で、旧昭和シェル系店舗の新ブランドへの移行分などが「出光」の店舗数(※1)として加算される形となっています。
ちなみに「出光(出光+シェル)」の2022年4月時点の店舗数シェア(※2)は、25.5%となっています。

※1 新ブランド「アポロステーション」は、当社集計では「出光」の店舗数に含まれています(2022年5月時点)。

※2 日本ソフト販売調べ(10店舗以上を展開するチェーン全体に占める割合)


出光 店舗数年推移

コスモ石油 ~徐々に減少傾向~

66、36、16、33店減と、ここ4年、店舗数は減少を続けています。その結果、2022年4月時点の店舗数は、2018年4月と比較してマイナス5.4%となりました。
1986年に「大協石油」「丸善石油」「旧コスモ石油(精製コスモ)」の3社が合併して「コスモ石油」が発足して以降は、再編の波に飲み込まれることなく今日に至っています。そのため、車の電動化で先行き懸念が広がる「時代の流れ」を反映した店舗数推移をたどっているように見えます。
また、コスモ石油は業界3位の地位を長年守っていますが、「ENEOS」「出光」の再編により1位、2位に大きく水をあけられる形となりました。


コスモ石油 店舗数年推移

JA-SS ~前年同月マイナスが続く~

ここ4年の推移は、83、23、38,71店減と毎年前年同月を下回っています。2022年4月時点の店舗数は、2018年と比べて10.3%の減少となりました。
「JA-SS」は、その名のとおり、農業協同組合系のガソリンスタンドです。全農が国内外の石油元売りから石油製品を仕入れ、石油元売りの製油所や全農グループ所有の備蓄基地から「JA-SS」などへ配送しています。
店舗数は減少しているものの、「昭和シェル石油」が「出光」に統合されたことにより、店舗数ランキングではワンランク順位を上げて業界4位に浮上しました。


JA-SS 店舗数年推移

昭和シェル石油 ~統合により新ブランドに移行中~

61、54、44店と減少を続け、2022年4月には1,008店と急減。出光興産との経営統合により、2021年4月から新プランドへの切り替えが進んでいるため、このような推移となっています。
長年親しまれた貝殻マークのシェルブランドは、今後徐々になくなっていく運命にあります。2022年4月時点ではまだ多数残っているため当社ランキングで5位となっていますが、いずれランキングからも退場することになります。


昭和シェル 店舗数年推移

キグナス石油 ~4年間で4.1%の減少~

5、7、5、2店と、やはり年々少しずつ減少しています。2022年は、2018年と比べて4.1%減となりました。
「キグナス石油」は、かつては精製部門を持つ石油元売り業者だったものの、同社の石油精製会社と東燃ゼネラル石油との合併後、供給を受ける形となったようです。2017年にはコスモエネルギーホールディングスと資本業務提携を結び、2020年からは主要仕入先が同ホールディングスに変更されています。


キグナス石油 店舗数年推移

太陽石油 ~4年間で8.3%の減少~

4年間の推移は、12、2、5、9店と減少傾向にあります。2022年の店舗数は、2018年と比べて8.3%減となりました。
「太陽石油」は精製もおこなう石油元売り会社で、前身の創業は明治41年という老舗です。ガソリンスタンドのブランド名は「SOLATO」で、西日本を中心に展開しています。
同社の沿革をみると、他社との経営統合はもとより資本業務提携の動きなども一切なく、業界再編とは無縁の状態で今日に至っています。


太陽石油 店舗数年推移

ホクレンSS ~減少基調で推移~

1店減、2店減、増減なし、5店減と、減少基調で推移しています。2022年は4年前と比べて3%減となりました。
「ホクレンSS」は、「農村の営みを支えること」を役割に掲げる、ホクレン農業協同組合連合会のガソリンスタンドチェーンです。道内3ヵ所に独自の石油出荷基地を持ち、全道のホクレンSSに自主配送しています。ほかの都府県は「JA-SS」が石油関連のサービスを担っていますが、北海道はホクレン独自の経営で展開しています。


ホクレンSS 店舗数年推移

ユニペト ~4年間で3%増加~

ここ4年間で1店舗のみの増加ですが、店舗数規模が小さいため、増加率では約3%と堅調な数字を示しています。
経営はUnipet Japan社で、四国、山陰山陽、九州に35店のガソリンスタンドを展開しています(2022年4月時点)。ホームページによると、2017年からは「Unipet 香港」を本社とし、同社は100%子会社となっています。セルフ形式にいち早く特化し、支払い方法も独自の方式を採っています。現金で給油するとお釣りがカードで戻るシステムで、次回は追加の紙幣と一緒に使うため小銭が要らない、という仕組みです。


ユニペト 店舗数年推移

ユニーオイル ~4年間で21.7%増~

2020年4月時点の店舗数が前年同月より5店増加しており、ほかの年はプラスマイナスゼロとなっています。このため、4年間で21.7%の大幅な増加率となっています。
経営はバロン・パーク社で、愛知県の知多地区、西三河地区、尾張地区で28店を展開しています(2022年4月時点)。ホームページによると、「ユニーオイル」のブランドで、ガソリンスタンドの他に自動車販売や鈑金・補修・塗装、カーケア・メンテナンス、レスキュー・レッカーなど幅広いサービスを手掛けています。


ユニーオイル 店舗数年推移

【まとめ】石油元売り各社は「過去最高益」
それでも脱ガソリンの動き進む

ガソリンスタンドチェーンの主な運営元である大手元売り会社の2022年3月期決算(連結)をみると、販売価格の上昇などにより軒並み大幅な増収増益となっています(「ENEOS」「出光」「コスモ」の3社は過去最高益)。
ガソリンスタンド業界は、過去には安売り競争が常態化し、採算悪化を繰り返してきました。しかし、大手再編や原油処理能力の削減、国による安売り競争是正の動きもあり、2017年度あたりから収益状況が改善に向かっていました。こうした環境変化も好決算に寄与しているものとみられます。

ただ、目下の記録的な好決算とは裏腹に大手元売り各社の将来に向けた危機感は強く、脱炭素への対応を急ぐ動きが相次いでいます。
ENEOSホールディングスは、2022年6月、NECがスーパーやショッピングモールなどに設置している電気自動車用充電器の運営権を取得。すでに系列ガソリンスタンドに設置している充電器と合わせ、約4,600基の運営方針を発表しました。
出光興産はガソリンスタンドの「スマートよろずや」構想を打ち出し、フードデリバリーや脳ドックなどの拠点へと転換を試みています。また、2027年の稼働を目指し、ほか2社と共同で地熱発電所事業に取り組んでいます。
コスモ石油グループも、2021年にEV管理システムの会社と業務提携を結び、「再生可能エネルギーとEVを最大限活用した脱炭素支援サービスの提供」に乗り出しました。

今後石油元売り会社の再編はさらに進むのか、元売りや石油製品販売会社の「脱ガソリン」は順調に進むのか。一方、ガソリン・灯油など生活に必須の燃料を、消費者が不便を感じないような体制で地方の隅々まで供給していけるのか、など。
抗いようのない世界的な脱炭素のうねりの中で、ガソリンスタンド業界の今後の動向が注目されます。


本記事は当社のチェーン店舗データをもとに作成しています


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