基幹系システムのクラウド化でおさえておきたい3つの視点

最終更新日 2021年4月1日 | システム

基幹系システムのクラウド化

クラウドが一般化してからおよそ10年。国内企業では、インターネットを通じてソフトウェアの提供を受けるSaaS(Software as a Service)により、主に事業部門が必要なサービスを個別に利用する形で導入が進みました。
そんな中、近年にわかに取り組む企業が増えているのが「基幹系システム(※1)を核にしたITインフラのクラウド化」です。かつては「社内ITインフラにクラウドは向かない」とさえいわれた基幹系システムのクラウド化がなぜ今注目されているのか?、現在から未来の企業経営にとってどんな意味を持ち、何が期待されるのか?
DX(※2)時代に求められる基幹系システムの構築に不可欠な、3つの視点を探ってみます。


※1 基幹系システム
企業が業務を遂行するのに不可欠のシステムで、何を指して基幹系とするかは業種業態によって異なる。一般的には、生産・販売・配送・在庫管理、財務・会計、人事・給与等のシステムを指し、金融機関では勘定系なども加わる。

※2 DX(デジタルトランスフォーメーション)
産業界においては、AI、Iotなど最新のデジタル技術を活用し、新しいビジネスの創出や事業構造の変革を図ること。企業のデジタル変革。



今、基幹系システムの「クラウド化」が必要な理由

日本では未だ多くの企業の基幹系システムが老朽化(レガシーシステム)状態におかれ、デジタル技術とデータを活用したDX推進の阻害要因となっています。「基幹系システムの刷新がうまくいくかどうかが企業の今後の生き残りを左右する」といっても過言ではない状況です。

では、基幹系システムを刷新するうえでなぜ「クラウド化」なのか、まずその理由について整理したいと思います。

クラウド導入のメリットとして企業が最も重視してきたのはコスト面です。マシン等入れ替えの必要がないため導入コストが安く、運用コスト(従量課金など)は掛かるものの、運用の人的負担は軽減されます。

これまでのクラウド普及の過程を振り返ると、例えばメールシステムやグループウェア、営業支援・顧客管理・財務会計システムなど、社内の各事業部門でそれぞれ使いたいクラウドサービスを導入する使い方が主流でした。基幹系システムのクラウド化は、効果の測り難さやセキュリティへの懸念などを理由に、ほとんど進んでいませんでした。

このように「クラウド対象外」とみられていた基幹系システムのクラウド移行が、ここ数年の間に進みだしたのはなぜか。それは企業が「DX推進の基盤としての役割を基幹系システムに期待するようになったから」です。

DXの中心は“データ活用”です。例えばAIやIoTと基幹系システムを連携させてデータを活用するとなると、データ分析のための統合IT基盤がなければ十分な成果を上げることができません。一方、クラウドが持つ「俊敏性・拡張性・柔軟性」は、変化のスピードが速く、データ量増大や拠点追加などへの対応が必要なデジタルかつグローバルな時代には、特に重要なメリットとなります。

このため統合IT基盤を構築するなら、コスト面でも、デジタルの新ビジネスを迅速に展開していく上でも、クラウドが最も適しているというわけです。

【視点1】全体最適のシステムをつくる

全体最適のシステム

もちろん、現行システムをそのままクラウドに移し替えるだけでうまくいくわけではありません。

日本企業のシステムの多くは部門や業務ごと別々に開発・追加された「つぎはぎ状態」で、「システムや業務プロセスの分断を招いている」と指摘されています。自社の業務や業界慣習に合わせて作り込まれた「部分最適化」追求のシステムが多いのです。

このような状態で一部業務システムをクラウドに載せた場合「社内に残るシステムとの連携がうまくいかずに、社内のリソースをさらに増やして対応することになってしまった⋯」という失敗例のように、無駄なコストを生み出す可能性すらあります。

また、社内の各事業部門でそれぞれ手っ取り早く売上や効率化に繋がりそうなツールのクラウド導入が進んだ結果、オンプレミス(※)とクラウドの混在による「ハイブリッドクラウド状態」、事業者の異なる複数のクラウドサービスが林立する「マルチクラウド状態」を招いています。

ハイブリッドクラウドやマルチクラウドは、現在トレンドといえるほどクラウド市場を賑わせています。しかし、「旧システムの機能を温存・継承したまま新技術を使いたい」と考えた企業が、結果として至ってしまった「ハイブリッドクラウド状態」「マルチクラウド状態」の場合は、ただシステムを複雑化させ、運用難などの弊害を生んでいるに過ぎません。

クラウド導入のメリットを最大限発揮させるためには全体を一元管理できることが前提です。DXの実現も統合IT基盤があってこそ。現在・未来のシステム刷新に当たって決して外すことができない条件です。

要するに、DXを見据えたシステムは「全体最適」のシステムでなくてはならないのです。事業所や部門・部署ごとに分断された「部分最適」ではなく、全体を俯瞰した最適化でないと業務・組織を横断したデータ活用ができず、新しいデジタルビジネスを柔軟に展開していくことも難しくなります。

そのためには、まず自社にとって本当に必要な業務機能の棚卸しからスタートし、システムの構造をできる限りシンプル化するアプローチが必須となります。さらに業務・組織横断でのプロセスの見直し・改善を図り、「全体最適」の中での「部分最適」を考える必要があります。


※オンプレミス
サーバーやソフトウェアなどの情報システムを自社内に設置し運用すること。クラウドコンピューティングが世に出て以降、区別するためにこの呼び方が使われるようになった。

【視点2】DXを常に継続していける基盤(進化するITインフラ)をつくる

ひと口に基幹系システム刷新といっても、実際にはオンプレミスの近代化や段階的なパブリッククラウドへの移行、ハイブリッドクラウド導入など、様々なパターンが実施されています。さらにハイブリッドクラウドでも、どれとどれを組み合わせるかやどこまでをクラウドにするか等々、構成は多種多様です。

明言できるのは、真にDXを見据えたシステム刷新なら「業務の大幅な改革にまで踏み込んだ本格的な再構築が必要である」ということです。どんな方法を採るにしても、目先の利益ではなく、それが将来の経営ビジョンや環境変化への対応、新ビジネスの実現スピードを見越した上での刷新であるか、が重要です。「既存システムの延命措置になっただけ」という事態は避けなければなりません。

少なくとも最終的な到達点として目指すべきは、最新の技術やイノベーションを短いサイクルで容易に取り込むことができるデジタルIT基盤です。新しい技術や機能が利用できない可能性があるシステムでは、当座のコスト削減・効率化効果があったとしても、新ビジネスの創出や長期的な視点に立った事業構造改革は望めません。

たとえば現在のクラウド型ERP(※)は、パソコンやスマホのOSなどと同様にシステムの自動アップデートが可能になっています。バージョンアップで新しい機能を追加し、システムそのものが進化可能になっています。つまり、うまくいけば、常にDXを継続していける状態に更新され、基幹系システムの改修・刷新の必要性や老朽化の心配が少なくなるシステムを作ることが可能、というところまで進化しているのです。


※ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング:統合基幹業務システム)
Enterprise Resource Planningの略で、元々は企業の基幹となる各種業務を統合的・一元的に管理し、経営の効率化を図る考え方。それを実現するためのITシステムを指す。

【視点3】全構成員が意識改革をし、組織改革を起こす

欧米では、一般的にシステムに業務を合わせることで基幹業務のIT化を進めてきたといわれます。パッケージシステムを導入し、それに合わせて現場の業務プロセスを変更する「標準化」が図られました。新興国の場合も、IT導入時期が後になったぶん、新しいシステムを合理的なまま使うことにより飛躍的な成長を遂げるようになったとみられています。
標準化されていればかなりの部分を自動化できるため、例えば「入力担当者が急に退職しても、引き継ぎの必要がなくなる」といったメリットを生むことが可能になります。昨今流行のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入も、業務が標準化されている方がより大きな効果が得られるのです。

一方日本では、各事業ごとにシステムの機能をカスタマイズし、部門最適化を追求することで競争力向上を図ってきました。業界慣習や現場の業務に合わせた改善の積み重ねが日本企業の強みでもあったのです。ところが、これがいつしかシステムの複雑化やブラックボックス化を招き、さらに現在ではスムーズなシステム刷新を妨げる要因となっています。

確かに、複雑化・ブラックボックス化したシステムの本格的な再構築は簡単なことではありません。巨額の費用や数年単位の時間を要するケース、予算オーバーややり直しのリスクもあります。これまでITベンダーに丸投げしてきたシステム構築・運用を、グランドデザインからユーザー企業が主体となって進める必要にも迫られます。また、現場ファーストだったシステムを根本的に見直すことになるため、社内の抵抗や軋轢を生む可能性もあります。
とにかく、経営者・経営陣が刷新の意味をよく理解し、危機感をもって決断しなければ成しえない大事業なのです。

このように、日本企業が直面するシステム老朽化問題の背景には日本独特の業界事情もあり、従来のやり方や価値観を一旦かなぐり捨てるぐらいの覚悟が必要です。そのため、まずは経営陣、事業部門長、現場の社員など、構成員すべてに「現状の把握・直視」と「意識改革」が必要です。そして経営者は、会社全体の組織改革を実行するために強力なリーダーシップを発揮しなければなりません。

「DXのための進化するIT基盤を構築」するのか、それとも「ハードルをクリアできずレガシーシステムの再生産」になってしまうのか⋯。 日本企業の多くは今、大きな岐路に差し掛かっている、といえます。

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