【2023年版】ガソリンスタンドチェーンの店舗数ランキング

2023年6月12日 | 業界・地域分析

ガソリンスタンド(SS)

原油高が一服したことなどにより、元売り大手3社の2023年3月期決算がそろって最終減益となった石油業界。脱炭素の流れが加速する中、ガソリンスタンド数はどのような動きをみせているのでしょうか。
今回は、当社のチェーン店データを元に、ガソリンスタンドチェーンの1年間(2022年4月~2023年4月)の店舗数推移やチェーン別ランキング(2023年4月時点)、前年同月比増減状況などを集計しました。また、どのチェーンがどの地域に多く展開しているか、都道府県別の分布状況も探ってみました。


データの集計方法について


  • 集計元のチェーン店データは、チェーン店の公開情報を当社が調査・収集したものです。すべてのチェーン店を網羅したものではありません。また、実態とは異なる場合がありますのでご了承ください。
  • 2023年4月時点で、国内に10店舗以上展開しているチェーン店を集計の対象にしています。
  • 当社のチェーン店データ調査・収集は毎月を基本としていますが、隔月など定期収集のチェーンもあります。表・グラフの対象月に収集がなかったチェーンの場合、当月時点で最新のデータを記載しています。
  • 店舗数の増減率(%)は、2023年4月と2022年4月の対比で算出しています(小数点2位以下は四捨五入)。

【月別推移】ガソリンスタンドチェーン店舗数
(チェーン全体、2022年4月~2023年4月)

↓1.6% ガソリンスタンド数は、毎月徐々に減少


ガソリンスタンドチェーン全体の店舗数推移(2022年4月~2023年4月)をみると、毎月前月を下回って推移しています。
2023年4月と前年4月を比較した前年同月比では、1.6%の減少(391店減)。2022年版(2021年4月~2022年4月)と同水準の減少率となっています。


ガソリンスタンド 月別推移

店舗数の増減率(前年同月比)

業種 2022年4月 2023年4月 増減率(%)
ガソリンスタンドチェーン 24,375 23,984 -1.6

【2023年版】ガソリンスタンドチェーン 店舗数ランキング

チェーン別店舗数ランキングを4月の前年同月比でみると、10位以内は減少チェーンが目立ち、11~18位はプラスマイナスゼロのチェーンが 8チェーン中 6チェーンを占めています。

もっとも、10位以内のうち大きな増減幅のチェーンは2019年4月に経営統合した出光興産と昭和シェル石油の「ブランド切り替え」が関わっているため、ランキング表の増減率だけで他のチェーンとの比較はできません。
ランキング2位の「apollostation(アポロステーション)」は経営統合により2021年4月に立ち上げられた新ブランドで、以降旧出光系の店舗と旧昭和シェル系の店舗が順次新ブランドに切り替わっています。このため、ランキング表では「apollostation」が急増し、「昭和シェル石油」と「出光」が急減した数字となっています。これを出光興産全体として集計すると、1年で若干の減少(77店舗・1.2%減、4月の前年同月比)となっていることがわかります。
出光以外のトップ10チェーンも、ランキング1位の「ENEOS」をはじめとして微減や若干減がほとんど。「ホクレンSS」のみプラスマイナスゼロとなっています。

一方、11~18位のチェーンはプラスマイナスゼロがほとんどで、13位の「セルフィックス」と14位「きのした」が共に1店舗ずつ増加しています。これら8チェーンは店舗数10~35の小規模チェーンです。少なくともこの1年に関しては規模が小さいほど「堅調」であったことが窺えます。

チェーン別店舗数ランキング(10店舗以上を展開する 計18チェーン)

順位 チェーン名 2022年4月 2023年4月 増減率(%)
1位 ENEOS 12,420 12,199 -1.8
2位 apollostation 2,924(※1) 4,670 +59.7
3位 コスモ石油 2,671 2,627 -1.6
4位 JA-SS 1,872 1,835 -2.0
5位 昭和シェル石油 1,848 742 -59.8
6位 出光 4,356(※2) 715 -83.6
7位 キグナス石油 442 432 -2.3
8位 太陽石油 308 307 -0.3
9位 ホクレンSS 255 255 0
10位 ペトラス 60 57 -5.0
11位 ユニペト 35 35 0
12位 ユニーオイル 28 28 0
13位 セルフィックス 20 21 +5.0
14位 きのした 16 17 +6.3
15位 Gasta 12 12 0
16位 オートバックスエクスプレス 11 11 0
16位 INPEX 11 11 0
18位 UENO 10 10 0
参考 出光興産(3ブランド計) 6,204 6,127 -1.2

※1 2022年8月の店舗数です(当社では、新ブランド「apollostation」の収集を2022年8月から開始したため)。


※2 当社では「apollostation」の収集を2022年8月から開始したため、2022年4月時点の「出光」の店舗数には、それ以前に「apollostation」に切り替わった分が含まれています。


◎参考情報:

上位チェーンの2022年以前の店舗数 経年推移(2018~2022年、4月時点)が【2022年版】で確認できます。

ランキングは当社のチェーン店舗データをもとに作成しています


日本ソフト販売が提供する、全国のチェーン店舗データ(飲食店・コンビニ・ドラッグストアなど)についての詳しいサービス情報は、こちらからご覧いただけます。


【地域分布】各チェーンの都道府県別出店状況(上位10チェーン、2023年4月時点)

ENEOS ~最多は北海道、愛知県や首都圏にも多く~

当社データから都道府県別の出店状況をみると、ENEOSのガソリンスタンドが最も多いのは北海道の735店。以降は500店代が愛知県(576店)、茨城県(526店)、千葉県(523店)、東京都(502店)と続いています。面積が広い、自動車産業が盛ん、首都圏、などの県が上位に多くみられます。
一方、100店舗未満の少ない地域は、鳥取(76店)、奈良(94店)、徳島・和歌山(95店)です。

運営会社は「ENEOS株式会社」で、「ENEOSホールディングス株式会社」がグループを統括しています。同グループは、数々の合併実施により「新日本石油、ジャパンエナジー、東燃ゼネラルグループ」の流れを汲んで形成されています。ここ十数年間に「JX日鉱日石エネルギー株式会社(2010年)」「JXエネルギー株式会社(2016年)」「JXTGエネルギー株式会社(2017年)」と商号変更が繰り返され、2020年6月「ENEOS株式会社」となって今日に至っています。

脱炭素の流れの中、近年同社では再生エネルギー事業や洋上風力発電に力を入れており、石油精製をやめる製油所でSAF(再生航空燃料)の製造も計画しています。また、2023年5月には完全子会社の「JX金属」を分離し、エネルギー専業に回帰する方針を発表しました。


apollostation ~出光興産の新SSブランド 北海道が最多~

都道府県別の分布状況をみると、北海道が323店と最も多く、2番目が愛知県(242店)で、ENEOSと同じ順序です。3番目は東京都(203店)で、兵庫県(197店)、新潟県(186店)の順で続いています。
店舗数ランキングの項で説明したように、旧出光系の店舗と旧昭和シェル系の店舗から「apollostation」への切り替えが現在進行中(2023年4月時点)のため、これらの数は「切り替えが進んだ地域の店舗数」という見方もできます。
また、少ない地域は、沖縄県(29店)、宮崎県(30店)、島根県(34店)などです。

運営会社は「出光興産株式会社」。アポロのアイコンに小文字で「idemitsu」のブランドロゴがグループを表し、アポロのアイコンに「apollostation」がSSブランドを表しています。

同社は石油に代わる新たな燃料としてアンモニア事業に注力しており、石油精製を停止している事業所に海外から調達するアンモニアの受け入れを計画。アンモニア合成の新たな技術開発にも挑んでいます。また「2026年までに年10万キロリットル」のSAF(再生航空燃料)生産計画も発表しています。


コスモ石油 ~愛知県で最多、2番目が大阪府~

都道府県別出店状況をみると、愛知県が144店と最も多く、2番目が大阪府(135社)。ENEOSとapollostationが最も多い北海道は、コスモ石油では3番目(111店)です。4・5番目は千葉(103店)、埼玉(97店)の関東県が続いています。一方、10店舗以下の少ない県は、沖縄(5店)と鳥取(9店)です。

運営会社は「コスモ石油株式会社」。「コスモエネルギーホールディングス株式会社」がグループを束ねています。
同社では近年、特に洋上風力発電事業に力を入れています。また、日揮HDなどと組み、廃食油を活用したSAF(再生航空燃料)製造に取り組む方針も打ち出しています。


JA-SS ~農業が盛んな地域に多く分布、東京は1店舗のみ~

農協系のガソリンスタンドであるJA-SSが多いのは熊本県(114店)、鹿児島県(90店)、新潟県(80店)、福島県(78店)、秋田県(72店)の順。大手石油元売り系の分布とは異なり、農業関係の需要が比較的多い県が上位にきています。
一方、目立って少ない地域は、東京都(1店)、大阪府(2店)。また、JA-SSは全都道府県に展開する大手3社とは異なり、店舗のない県が2つあります。一つは、同じ農協系の「ホクレンSS」がエリアとする北海道で、もう一つは長野県(※)です。

JA-SSの経営(チェーン展開)は、各地域の農協(単位農協)の直営または子会社によるもの、全農エネルギー株式会社によるもの、などがあります。


※長野県の農協系ガソリンスタンドは、店の外観がJA-SS統一デザインの店舗ではなく石油元売りブランドの店舗が一般的となっています。JA-SSの店舗検索にも情報の掲載がないため、当社の収集データには含まれていません。


昭和シェル石油 ~apollostationへ移行中も、北海道に50店弱が存在~

当社のデータから都道府県別の出店状況をみると、北海道が48店と最も多く、埼玉県(36店)、愛知県(35店)、神奈川県(32店)の順で続きます。 店舗数ランキングの項で説明したように、経営統合により昭和シェル石油のガソリンスタンドは順次「apollostation」へと切り替わっているため、これらの店舗数はさらに減少していくものとみられます。
とはいえ、2023年4月時点ではまだ全都道府県に昭和シェル石油の店舗が存在しています。最も少ないのは沖縄県(1店)で、岩手・鳥取・広島も3店を残すのみとなっています。


出光 ~apollostationへ移行中 岡山県はゼロに~

「出光」ブランドの店舗数が多い地域は、北海道(44店)、新潟県(42店)、千葉県(41店)の順。
こちらも「apollostation」へと切り替えが進行中です。昭和シェル石油よりペースは速めに進んでおり、前回(2022年版)の店舗数ランキングから3ランクダウンの6位に後退しています。
2023年4月時点でまだ46都道府県に店舗があり、岡山県のみゼロとなっています。そのほか宮崎県が1店舗のみ、滋賀・鳥取・佐賀も2店を残すのみとなっています。


キグナス石油 ~埼玉・兵庫県に多く分布~

当社データから都道府県別の出店状況をみると、2023年4月時点で全国41都道府県に展開しています。最も多いのは埼玉県(49店)で、次いで兵庫県(40店)、3番目以降が愛知県(36店)、神奈川県(29店)と続いています。
10店舗以下の都道府県が過半数を占めており、1店のみの県が青森・福島など5県、2店のみが宮城・奈良など4県となっています。店舗がない県は、岩手・秋田・福井・滋賀・鳥取・沖縄の6県です。

運営会社は1972年設立の「キグナス石油株式会社」です。1922年に「日本漁網船具株式会社」として潤滑油販売を始めたのが同社の起源です。「キグナス」ブランドは1929年に制定と、古くから使われています。


太陽石油 ~西日本中心に27府県 愛媛県が最多~

都道府県別の出店状況をみると、同社の四国事業所がある愛媛県が48店と最も多く、2番目が宮崎県(40店)、広島(23店)、大分(18店)の順で続いています。
2023年4月時点、西日本中心に27府県で展開しており、少ない地域は、茨城・福井・静岡の各1店、千葉・長崎の各2店など。展開がない都道府県は北海道・東北や関東、中部地方で多く、西日本でも近畿・中国の一部や沖縄には店舗がありません。

運営会社は「太陽石油株式会社 」。1908創業の「青木石油店」が前身で、1941年に現社名の太陽石油が発足。新ブランド「SOLATO」は2008年に立ち上げられました。


ホクレンSS ~「クルマ」が欠かせない北海道の暮しをトータルサポート~

ホクレンSSは、ホクレン農業協同組合連合会のガソリンスタンドチェーンです。したがって地域は北海道内のみで、255店舗を展開しています。

乗用車はもとより、トラクターやトラックの燃料となる軽油、米穀の乾燥や冬場のハウス栽培のための営農灯油、農耕用オイルなどの安定供給を使命としています。雪に閉ざされる冬場には、灯油の定期配送サービスも提供しています。


ペトラス ~イオン併設 東北地方など全国24の県で展開~

ペトラスは、イオングループのショッピングセンターに展開しているガソリンスタンドです。都道府県別の状況をみると、宮城県に7店と最も多く、青森・秋田県が各5店、新潟・4店の順。店舗数は少ないながら、上位は東北方面が目立ちます。
2023年4月時点で全国24の県に店舗があります。地方中心に展開されており、大都市圏は福岡県(2店)と愛知県(1店)のみとなっています。

運営会社は、「メガペトロ株式会社」。イオン・70% 三菱商事・20% 三菱商事エネルギー・10%の出資比率で、1996年に設立されています。リアル店舗が持つ強みを活かし「地域になくてはならない生活インフラになること」を目指しています。


【まとめ】「長期減少」に「環境激変」、変革迫られるガソリンスタンド

当社の経年データから、ガソリンスタンドチェーン店舗数(※)のここ5年間(2018~2023年、4月時点)の推移を集計したところ、0.9%から2.4%の幅で毎年前年を下回っており、徐々に減少し続けていることがわかります。2023年4月(23,984店)と5年前の2018年4月(25,896店)を比較すると、7.4%減、数にして1,900店余の減少となっています。


※国内で10店舗以上を展開するチェーンの店舗数合計。


また、資源エネルギー庁が2022年にまとめた給油所数の推移(登録ベース)※ を見ると、すでに平成6年(1994年)度末の「60,421」をピークに減少し始め、令和3年(2021年)度末には「28,475」と半分以下に減っています。また、新設数も少なく、令和3年度末は初めて100件を割り込んで86件となっています。


※資源エネルギー庁「揮発油販売業者数及び給油所数の推移(登録ベース)」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/resources_and_fuel/distribution/hinnkakuhou/220729a.html


近年の主な減少要因としては、乗用車保有率の減少や燃費向上等によるガソリンの需要減が挙げられます。それに加えて脱炭素の流れによるEV(電気自動車)化の加速や「2035年ガソリン車の新車販売禁止」の政府目標など、ガソリンスタンド業界の将来はネガティブな見通しに支配されており、今後も減少傾向は続くものと考えられます。

上記「各チェーンの都道府県別出店状況」の項でも触れたように、大手元売りは製油所を水素やアンモニア、SAF(再生航空燃料)といった次世代エネルギー拠点に転換する動きを加速しており、石油精製だけに頼らない「環境メジャー」への脱皮を図って構造改革を進めています。

急激な環境変化にさらされているガソリンスタンド業界。石油製品がすべてなくなることはないとはいえ、現状のままで「施設が老朽化したら撤退」の道を選ぶのか、それとも新時代の「モビリティのサービス拠点」として生き残り策を模索していくのか。大手も中小も今まさに岐路に立たされているといえます。

本記事は当社のチェーン店舗データをもとに作成しています


日本ソフト販売が提供する、全国のチェーン店舗データ(飲食店・コンビニ・ドラッグストアなど)についての詳しいサービス情報は、こちらからご覧いただけます。


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