【2022年版】牛丼チェーンの店舗数ランキング

2022年11月7日 | 業界・地域分析

牛丼チェーン店

かつて激しい価格競争が繰り広げられ、「庶民の食べ物」代表のようなイメージの牛丼チェーン。コロナ禍を経た昨今の店舗数は、どのような動きをみせているのでしょうか。
今回は、当社のチェーン店データを元に、牛丼チェーンの2021年7月~2022年7月の店舗数推移やチェーン別ランキング、前年同月比増減状況などを集計しました。また、2018~2022年の店舗数年推移をチェーン別に比較することにより、ここ4年間の業界動向を探ってみます。


データの集計方法について


  • 集計元のチェーン店データは、チェーン店の公開情報を当社が調査・収集したものです。すべてのチェーン店を網羅したものではありません。また、実態とは異なる場合がありますのでご了承ください。
  • 2022年7月時点で、国内に10店舗以上展開しているチェーン店を集計の対象にしています。
  • 当社のチェーン店データ調査・収集は毎月を基本としていますが、隔月など定期収集のチェーンもあります。表・グラフの対象月に収集がなかったチェーンの場合、当月時点で最新のデータを記載しています。
  • 店舗数の増減率(%)は、2022年7月と2021年7月の対比で算出しています(小数点第3位以下は四捨五入)。

【月別推移】牛丼チェーン 店舗数(全体、2021年7月~2022年7月)

↑0.88% 1年前と比べわずかに店舗増加


牛丼チェーン全体の店舗数推移(2021年7月~2022年7月)をみると、1年を通して増減の動きは小さく、最も増えた月で11店(2022年1月)、最も減った月でも7店(2021年9月)で、そのほかの月はおおむね2~6店舗ペースの増加となっています。この結果2022年7月と2021年7月の前年同月比では、0.88%の微増となりました。


牛丼 店舗数推移 2021-2022

店舗数の前年同月比増減率

業種 2021年7月 2022年7月 増減率(%)
牛丼チェーン 4,538 4,578 +0.88

【2022年版】牛丼チェーン 店舗数ランキング

新興勢力なき寡占市場で、増減の動き少なく


チェーン別店舗数ランキングを7月の前年同月比でみると、1位の「すき家(0.26%増)」と2位の「吉野家(0.68増)」はともに微増で、3位の「松屋」は店舗数にして30店、増加率で3.14%と堅実に店舗数を増やしています。牛丼が主なメニューではない4位「なか卯(※)」は0.65%の微減となっています。

牛丼チェーンは非常に寡占化した市場であるのが特徴で、『丼ぶりと京風うどん』の「なか卯」を含めても、4チェーンだけのランキングとなりました。新興勢力がなく順位も長年固定化した業界のためか、店舗戦略は全体に「安全運転」といった印象です。


※当社でほかの丼ぶりチェーンも含めて調査したところ、レギュラーメニューに「牛丼」があるのは同チェーンのみだったため、ランキングの対象チェーンとしました。


チェーン別 店舗数ランキング

順位 チェーン名 2021年7月 2022年7月 増減率(%)
1位 すき家 1,937 1,942 +0.26
2位 吉野家(※) 1,181 1,189 +0.68
3位 松屋 956 986 +3.14
4位 なか卯 464 461 -0.65

※チェーン名の「吉」の字は、正しくは「土(つち)」に「口(くち)」と書きます。


ランキングは当社のチェーン店舗データをもとに作成しています


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【年推移】チェーン別 店舗数(2018~2022年7月時点)

 すき家 ~4年前と比べほぼ横ばいの微増~

9店減、9店増、2店減、5店増と、同チェーンの店舗数規模としては小幅の増減を繰り返した結果、2022年と2018年の比較では0.15%のごくわずかな増加となりました。

運営会社は「株式会社すき家」で、「株式会社ゼンショーホールディングス」の完全子会社です。牛丼1号店は1982年にオープンしました。
IR情報で公開されているすき家の既存店売上高の推移ををみると、2021年3月期(2020年4月~2021年3月)は前年比97.8%と前年を若干割り込んだものの、2022年3月期(2021年4月~2022年3月)は109.4%と回復し、直近の2023年3月期上期(2022年4月~9月)も108.7%と前年を順調に上回っています。

このように牛丼の売上状況には安定感があるものの、ゼンショーグループ内では近年、どちらかというと「ジョリーパスタ」や「はま寿司」といった別業態の店舗数増加が目立っています。売上高構成比率35.3%(※)の主力・牛丼の店舗数に関しては、あまり大きな動きはみられないようです。


※株式会社ゼンショーホールディングス「会社概要」より(2022年6月27日現在)。


すき家 店舗数 年推移

 吉野家 ~4年間で8.88%増加~

2018年から2019年にかけての98店舗の増加が突出しています。2021年に23店減少しているものの、4年間で8.88%増と4チェーンで最も高い伸びとなっています。

運営会社は「株式会社吉野家」。親会社が「株式会社吉野家ホールディングス」で、傘下には「はなまるうどん」の運営会社も属しています。「吉野家」の創業は1899年と古く、魚河岸で働く職人向けに日本橋で開店した牛めし店がそのはじまりです。

吉野家ホールディングスの第2四半期連結累計期間(2022年3月1日~8月31日)の業績報告によると、「吉野家」セグメント(国内)の売上高は前年同期比8.3%増と順調に回復。郊外店を中心に店内飲食が回復傾向にあることと、外販事業が堅調であることなどを増加の理由に挙げています。一方、セグメント利益は16.4%減となり、こちらは原材料高騰や光熱費の上昇等を原因としています。


吉野家 店舗数 年推移

 松屋 ~2022年の一挙30店舗増で、4年前に比べ3.14%増に~

2019年と2020年で計10店舗増えたものの、2021年の10店減で2018年の店舗数に逆戻り。ところが、2022年の一挙30店舗の増加で、4年前との比較では3.14%増となりました。

運営会社は「株式会社松屋フーズホールディングス」。1968年の創業(中華飯店「松屋」)で、1968年に牛めし・焼肉定食店「松屋」が開店しています。同チェーンでは「牛丼」ではなく、「牛めし」の呼び名で統一しています。

松屋ホールディングスの既存店売上高(牛めし事業店)の推移をみると、2021年3月期 (2020年4月~2021年3月)の前年同期比86.4%を底に、2022年3月期(2021年4月~2022年3月)が98.7%、2023年3月期上期(2022年4月~9月)は110.4%と順調に回復してきています。
また、令和5年3月期第1四半期(2022年4月1日~6月30日)の決算短信では、売上高が前年同期比10.8%増と増加した一方、営業利益はマイナスから脱することができていないのが現状です。


松屋 店舗数 年推移

 なか卯 ~4年前と比べほぼ横ばいの微減~

5店減、6店増、1店増、3店減と推移した結果、4年前の2018年と比べて0.22%の微減となりました。数としては1店減っただけなので、ほぼ横ばいといえます。

上記のランキング記事でも触れたとおり、牛丼チェーンといっても「なか卯」は少し性質を異にしており、牛丼は丼ぶりメニューのごく1部に過ぎない位置づけです。運営会社は「株式会社なか卯」で、「すき家」と同じく「株式会社ゼンショーホールディングス」の完全子会社です。1969年に大阪府茨木市の手づくりうどん店として創業し、2005年にゼンショーの傘下に入りました。

「なか卯」の業績は、「すき家」と同じくゼンショーホールディングスの「牛丼カテゴリー」に属します。2023年3月期第1四半期(2022年4月1日~6月30日)連結業績での「牛丼カテゴリー」売上高は、前年同期比6.7%増と堅調ですが、「なか卯」単独の業績はわかりません。


なか卯 店舗数 年推移

[番外編]東京チカラめし ~一世を風靡も、急減した「焼き牛丼」チェーン~

2022年7月の店舗数が3店(※)なのでランキング対象からは外れますが、かつては約130店に急拡大した「焼き牛丼」が売りの牛丼チェーンです。大手3社体制の当業界において一時期注目を集めた存在ということで、「番外編」として取り上げます。


※その後2022年8月28日に「新宿西口1号店」が閉店し、現在(2022年10月末)国内では計2店舗となっています。


同チェーンの運営会社は「株式会社SANKO MARKETING FOODS」。ここ4年の店舗数の動きをみると、2018年にはすでに11店舗まで減少した状態になっており、その後さらに3、1、4店と年々減少しています。

同チェーン店舗数がピークに達したのはスタートから2年ほどの2013年で、翌2014年辺りからは下降線を辿りました。さまざまな理由が取り沙汰されましたが、「焼き牛丼」は普通の牛丼とオペレーションが異なることもあり、「急拡大に店舗教育が追いつかなくなり、品質やサービスの低下(という評判)から客足が遠のいた」というのが主な真相のようです。

東京の店がなくなり千葉と大阪の2店のみとなりましたが、2021年に進出した香港では3店舗が順調に売り上げを伸ばしている、とのこと。2022年11月1日には、タイ王国の事業会社との基本ライセンス契約締結を発表するなど、目下のところ、海外での店舗展開に主軸を移しているようです。


東京チカラめし 店舗数 年推移

【まとめ】中堅・中小チェーンが不在なのは何故?

牛丼チェーンの合計店舗数は、4大チェーンだけで4,578店(2022年7月)。寿司チェーン業界(4,328店)を上回り、焼肉チェーン業界(2,976店)を大きく引き離しています。「牛丼がいかに大手のみに寡占化された業態になっているか」が、店舗数規模だけでも窺い知ることができます。

他ジャンルの飲食チェーンで多くみられる「数十から百店舗台のチェーン」は存在せず、ラーメン・焼肉など他業態では活発な「新興勢力」も見当たりません。かつては「神戸らんぷ亭」や「牛丼太郎」等少ないながら複数のチェーン展開があったものの、およそ2000年代にはチェーンとしての終焉を迎えました。[番外編]で紹介した「東京チカラめし」も「新興勢力」として一時的に大躍進したものの、短い期間で縮小を余儀なくされました。

飲食店は一般的に、中小事業者の活躍の余地が大きい分野のはずです。しかしこうなると、「牛丼チェーンには寡占化に向かう何かがある」としか考えられなくなってきます。
この要因については、牛丼チェーンが「在庫回転日数」が長い商売であるため、資本力に勝る大手でないと成功しにくい、とする説が有力視されています。また、2000年代に中小チェーンの淘汰が進んだのは、ちょうどその頃から激しさを増した大手チェーン間の価格競争も関係しているとみて間違いなさそうです。

寡占化が進んだ牛丼業界では、出店と退店に一定のバランスが保たれているためか、増減の少ない保守的な動きに止まっているのが現状です。こうしたほぼ大手のみの業界体制がさらに堅固になっていくのか、それとも新たな「新興勢力」の出現があるのか、今後の動向が気になるところです。


本記事は当社のチェーン店舗データをもとに作成しています


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