DX・ビッグデータ時代でもマスターデータの管理が必要な理由

2021年4月1日 | データベース

マスターデータ

マスターデータは、顧客情報や製品のデータ、勘定科目、従業員といった、複数の業務アプリケーションで共通して使用する基本のデータです。「業務を遂行するうえでなくてはならない情報」であり、企業のシステムに脈々と蓄積されてきた貴重な「資産」でもあります。
ところが、近年企業の収集可能なデータは増加の一途をたどり、分析・活用されるデータも多様化しています。このため量だけでみれば、マスターデータはビッグデータのごく一部に過ぎない存在となっています。
今回は、この大きなデータ環境変化の中で「マスターデータはどんな意味を持ち、どんな役割を果たしているのか」を探ってみます。




データ活用の現状とマスターデータとの関係

システムのデータベースで管理されるマスターデータは、整合性がとれたきれいな状態を保つ「マスターデータ管理」さえキッチリおこなわれていれば、比較的分析・活用がしやすいデータです。

中でも顧客マスターは、売り上げの向上や顧客の囲い込みなどの営業活動において、古くから活用の主役を担ってきました。また近年では、社内各部署の業務システムに分散するデータベースを集約・一元化することで、社内の業務や経営状況の「見える化」も進められてきました。

一方、現在のデータ活用をめぐる状況が、すっかり様変わりしているのも事実です。ほとんどがAIやIoT、ビッグデータ、DX(デジタルトランスフォーメーション)などの文脈で語られるようになっており、扱われるデータを表すキーワードは「大容量」「リアルタイム」。データの種類やソース、活用の技術や手法は多様化・高度化する一方です。

これら増え続ける様々な形式のデータは、マスターデータなどの構造化データに対し、非構造化データと分類されています。
現在、DXに邁進する企業の間では、こうした非構造化データを分析することにより、「構造化データからは得られない新たな知見を獲得できるのではないか」との期待が高まっています。

こうした状況下では、マスターデータはビッグデータ全体のごく一部に過ぎなくなり、データとしての存在感は大きく後退しているように見えます。

しかし、決してそんなことはありません。DX・ビッグデータ時代でも、依然としてデータ活用の根幹にある存在は、マスターデータであることに変わりはないのです。

「マスターデータと連携してこそ」のトランザクションデータ

データ連携

業務システムに蓄積されたデータの中には、マスターデータ以外にも「トランザクション(商取引)データ」というものがあります。これは、「いつ、誰に、何を、何個売り、代金はいくらで、いつ納品で、支払ったのはいつか」などを時系列に記録し、日々変化していきます。企業が活動すればするほど、どんどん増えていくデータです。

トランザクションデータの昨今の活用例としては、小売業がPOSデータから顧客の購入行動や心理を分析して顧客ごとに最適化された施策をタイミングよく働きかけたり、金融機関が取引履歴を分析して与信診断に用いる「トランザクションレンディング」などがあります。

一般的に、企業は全社的に共通のIDを発行し、顧客や商品等を管理します。IDによりマスターデータを特定でき、ID単位に売上を集計したり、推移を見たり、ほかの顧客やほかの商品との比較をおこなったりします。

重要なのは、トランザクションデータがマスターデータから派生する情報であるという点です。マスターデータという唯一の基礎情報があり、その唯一の情報の行動や動きを示す情報がトランザクションデータです。つまり、マスターデータと紐付いて的確に管理されていなければ上手く活用できない、ということです。

あらゆるデータをつなぎ合わせる鍵「マスターデータ」

近年のデジタル化によって分析ニーズが高まってきた非構造化データは、メール文やWord等文書、各種ログデータ、センサーデータ、画像、音声、動画など。具体的には、オンライン行動履歴やインターネットの検索履歴、コールセンターの対応履歴、ソーシャルメディアでの顧客の声、デバイスやIoT機器のセンサーデータなどが、近年盛んに収集されています。

さらには、外部データ(オープンデータや企業の商用データ等)を自社データと掛け合わせて活用したり、他社との技術・データ連携によって新しいビジネスを生み出そうとする機運も高まっています。

つまり、マスターデータとつなぎ合わせて一元的に管理し、ITやデジタル技術を使った分析処理に利用したいデータが増え続けているのです。

上段のトランザクションデータ同様、これらは「マスターデータに子データとして紐付けて利用されることが多い」データです。そのため、まず誤登録や重複の解消などマスターデータの精度を高めたうえで、これらのデータと正確に連動させる必要があります。

特に最近のマーケティングは、パーソナライズ化された顧客体験(カスタマーエクスペリエンス;CX)の向上や適時的確な施策の提供を目指す手法が主流となっており、顧客を特定できないデータはあまり役に立ちません。「どの商品が何個売れているか」「特売日の来店客は何人だったか」といったデータでは、現状の改善はできても「一人ひとりの顧客への理解を深めて新たな価値を提供する」ことはできないからです。

顧客を特定するマスターデータと常に連携し、社内のどこからでも素早く正確に必要なデータの検索や抽出、分析ができる状態を作ること。それが、「新サービスの創出」や「的確な経営判断」といったデータ活用の目的を実現するうえでの近道といえるのではないでしょうか。

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